Respect to the Distance
Kaito、Tread、Quadra等、複数の名義を持つアーティストHiroshi Watanabe。どの名義も浮遊感のある音響空間と幻想的とも言えるシンセ音が作品内に存在しており、多くの人が彼の創る音に虜にされている。今やドイツの大御所レーベル・Kompaktを中心に世界を渡って活躍している日本人のコンポーザーの1人だ。
Hiroshi Watanabeが多くの人を虜にさせるのは彼のどの作品にも存在している幻想的なメロディーセンスなのではないだろうか。彼は作品のコンセプトによって複数のアーティスト名義を使い分けているのだが、異なるコンセプトによって作られた作品の中にも幻想的で叙情的なメロディーワークが見え隠れしている。彼の卓越したシンセ音はテクノの硬質的なリズム隊に決して埋もれることがなく、かといって楽曲のコンセプトを崩すこともなくリスナーを自然に包み込んでくれる。僕自身彼の作品世界に何度も泣かされながら埋没したことがある。
僕がとりわけHiroshi Watanabeのアーティスト名義の中で気に入っているのは、美しく壮大な展開を見せる楽曲が多いKaito名義の作品だ。テクノ・ダンストラックというとバキバキとした硬質系のリズムに身を任せてガンガン踊る感じの楽曲が多いように思われるが、Kaito名義によって作られた音はそんな躍動感溢れるパワフルな世界から一歩身を引いている、リズムに身を任せるのではなく耳に聴こえてくる幻想的なメロディーに身を任せる楽曲が多い。今回紹介している作品「Special Life」もテクノ本来の人を躍らせるような心地よさを控えめに、Hiroshi Watanabeらしい美しさを前面に押したダンストラックとリスニングトラックを良い塩梅で両立させている。徐々に盛り上がりを見せるリズム隊とそれを優しく包み込むシンセ音。特にメロディーは叙情的で切ないものが多く、聴いていると機械音の中にも人間らしい優しさが感じられる。これはHiroshi Watanabeの人間性が楽曲の中に自然と現れているのではないだろうか。そしてこの音は彼だからこそ作ることが出来る音なのだろう。
作品をリリースする毎に洗練され、輝きを失わないHiroshi Watanabeの世界観。これからも彼の作品を聴いて、彼の活躍に期待したいと思う。
文章・川端星仕
関連リンク(MySpace内でのHiroshi Watanabeのページです。彼の楽曲が視聴できます。)
http://www.myspace.com/hiroshiwatanabemusic
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